
フランスの交流校・ENSAD(国立高等装飾美術学校)との国際交流20周年を記念して2025年度より進めてきた共同プロジェクト「虫」の成果展を、人形町Vision’sにて開催しました。
本プロジェクトは、これまで行ってきた交換留学による交流に加え、両校の学生が一つのテーマのもとで作品を制作し、対話を重ねながら共同研究を行う初めての試みです。
テーマとなった「虫」は、ENSAD教授であり本交流の立ち上げに携わった前田宏先生が長年にわたり、虫の写真を撮り続けてきたことをきっかけに選ばれました。また、共通テキストには、日本文化と虫への深いまなざしを持っていたラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の『虫』を採用。日仏それぞれの学生が文章を読み解き、自ら選んだ虫をリサーチしながら、写真や版画、絵画、映像など多様な表現で作品制作に取り組みました。
プロジェクト開始当初は、オンラインでの交流や言語・文化の違いなど、さまざまな課題もありました。しかし、お互いの作品や言葉に触発されながら制作を重ねることで、それぞれの表現は大きく広がっていきました。
アサビの学生たちは自然の造形や生態から着想を得て、自身の感性をデザインや映像などへ発展させ、一方でENSADの学生たちは自然から得たイメージを独自の物語や新たな要素と結びつけ、「変容(メタモルフォーゼ)」をテーマとした作品へと展開。それぞれ異なる文化や視点から生まれた作品が一堂に会し、約1年間にわたる交流の成果を紹介する展覧会となりました。
また、国際交流プログラムに参加した学生作品に加え、両校の教員による「虫」をテーマにした作品も展示されました。ENSADの教員は普段、教育活動を中心としているため自身の作品を発表する機会が限られており、今回の展覧会で作品を展示できたことを大変喜んでいました。
レセプションでは、ENSADから来日した講師による作品解説も行われました。制作の背景や「虫」というテーマに対する考え方、それぞれの文化や視点の違いについて語られ、来場者は作品への理解を深めながら鑑賞を楽しみました。
本プロジェクトを通して築かれたつながりは、この成果展で終わりではありません。
7月には、ENSADから2名の講師、マシュー・スタントン先生とオリヴィエ・ゲード先生を迎え、後期開講の学術造形科目「国際交流プログラム」に先立つワークショップを実施しました。学生たちは、後期の共通テーマとなるフランス発祥のカードゲーム「ミリオラマカード」を題材に、ドローイングや写真を用いたグループ制作に取り組みました。最終日には制作した作品を教室内に展示し、互いの作品を鑑賞しながら意見を交わすことで、それぞれの発想や表現方法への理解を深めました。
後期の授業では、「ミリオラマカード」と日本の「花札」を題材に、それぞれの文化的背景や遊びの歴史、印刷技法などについて学びます。その学びをもとに学生一人ひとりが独自の視点でカードを制作し、アサビとENSADの学生同士で作品やアイデアを交換しながら、新たな表現へと発展させていきます。
国際交流プログラムに参加した両校の学生たちが制作した「ミリオラマカード」は、一つのカードゲームとしてパッケージ化される予定です。また、その成果物はフランス国立トランプ博物館での展示も企画されており、日仏の学生・教員との交流を通して、多様な文化や価値観に触れながら、新たな表現や創造へとつながる学びを深めていきます。
今後も阿佐ヶ谷美術専門学校では、国際交流を通じた教育・研究活動を積極的に展開し、その様子を発信していきます。今後の取り組みにもぜひご注目ください。
