渡邉磨哉さん
リビングプロダクトデザインコース2017年卒。卒業後は株式会社N and R Foldings Japanに入社。プロダクトデザイナーとして活躍している。(2018年現在)
武藤聖馬さん
キャラクターデザインコース2017年卒。卒業後はフリーの絵コンテライターとして活躍している。

過去、アサビフェスタにはオレンジ色のヒーロー「チュロキャット」が現れその姿は来場者の目をくぎ付けにし、模擬店の売り上げに貢献し、悪との戦いもステージショーや映像化されて大活躍しました。

そんなヒーロー「チュロキャット」を生み出し、卒業後は特撮の絵コンテライターをしている武藤 聖馬(むとう しょうま)さんと 共にチームの1人として撮影にも携わり、リビングプロダクトデザイン科学生として各大学や専門学校が出展する「学生プロポジション」に2年連続出展、1回の受賞も果たす快挙を成し遂げ卒業後はデザイン事務所でプロダクトデザイナーとして勤めている渡邉 磨哉(わたなべ まや)さん

今回はこの2人が、学生時代の特撮制作秘話やデザインについて、これからの生き方について話してくれました。

対談の前に(画像で) リビングプロダクトデザイン出身の渡邉さんには「武藤さんをプロダクト化してみてください。」 キャラクターデザイン出身の武藤さんには「渡邉さんを描いてください。」 という、広報担当から突然の無茶ぶりにも快く応じてくれました。

渡邉さんの描き出しは武藤さんへのブレストから始まりました。(以下敬称略。写真左:渡邉さん、写真右:武藤さん)

渡邉
「武藤、といえば特撮系だよね。変身するとしたら、どんなベルトで、どういう変身方法なの?」
武藤
「僕が変身するとしたら?シンプルなのがいいな。あと、走りながら変身したい!」 

黒板に迷いなくスルスルと描き始める武藤さんとは対照的に、渡邉さんはまず、聞き取りから始めてキーワードを羅列していく。 制作のスタイルも過程も違う2人が印象的です。

渡邉
「名前にも”馬”の文字が入ってるし、ベルトは馬の蹄にしようか。これを、こう、こっちに回すと…」ー武藤の言葉や要望を書きだしながらー
武藤
「フォームチェンジするの?」
渡邉
「そう。最終的にアルファベットになったらすごく面白いと思う。」  

変身ベルトの仕組みを書き出しながら説明する渡邉さん

一方、武藤さんの描いた渡邉さんは……

武藤
「僕の中での磨哉ってやっぱり、灰色地のバナナの描いてあるパーカーで、ロック大好きオタクなイメージがあるので。 結局はその、渡邉 磨哉という変態を描いたんです。後ろは磨哉が笑ってる顔で、口はバナナになっていて、身体中からキノコ生えながら歌ってる。キノコ頭の磨哉くんの図。」
渡邉
「不衛生…。」
武藤
「ちょっとね、不思議な国から来た感じ。でも、もっと面白いの描きたかったな、意外と面白くならなかった…大反省だ。」
渡邉
「僕は、”武藤くんをテーマにしたプロダクト”ということなので、最初に色々ブレストをしていって、変身ベルトにしようと思いました。 ”馬”っていう字をキーワードに出して、武藤くんからの要望であるシンプルなガジェットにして、蹄をガシャッと回してフォームチェンジするというところまで。 まぁこれが、アルファベット馬(UMA)のUになっていれば面白かったかなと。」
武藤
「蹄が”SHOMA”になったらカッコイイ。」
今やってる絵コンテの仕事は、まさに僕が今まで子供時代から見てきたものに対する恩返しになる。

絵コンテライターとは、具体的にどんな仕事なのですか。

武藤
「絵コンテライターは、監督が考えたこと、説明したことを絵に描き起こすのが仕事です。 特撮はCGも使うし合成もするファンタジーの世界だから、監督が口で説明してもスタッフに伝えきれないこともある。 例えば“キックの絵を描いてくれ”と監督からオーダーが入ったとする。 そこから僕なりに”キック”の画を考えないといけない。 監督が思い描く画にするためにコミュニケーションをたくさんする。 仕事に慣れてくれば”〇〇さんがアクター(俳優)だから、こういうキックだろうな”と画を思いつくようになるし、それを踏まえた上で”格好いいキックを 描きたい”と思っています。それがヒーローに対する僕の敬意。 今やってる絵コンテの仕事は、まさに僕が今まで子供時代から見てきたものに対する恩返しになる。 表には出ない仕事だけど、それを元に撮影された特撮作品を子供達が観て”僕も仮面ライダーになりたい”って思ってくれたら僕が絵コンテをやってる意味がある。」
渡邉
「純粋なのが武藤の強みだよね。OKが出るまで何枚くらい描くの?」
武藤
「一発でOKの時もあるよ。細かいところまでイメージを持っている監督だとリテイク(※作り直し)が多くなる事もある。逆に”お前に任せる”っていう時もあるね。」
渡邉
「企画から参加することってあるの?」
武藤
「エグゼイド(※仮面ライダーシリーズ)の最後のライダーキックするシーン、エグゼイド特有の必殺技画面があって。 今までは、必殺技画面は真ん中に文字がバーンて入って、余白にそれぞれの画面を入れるんだけど、最終回だけ5人ライダーキックだった。 監督に”5人が入る画を考えて描いてみて”って言われて、好きなアングルで描いたら、監督が採用してくれた。オンエアで自分が描いた画のまま放映されて嬉しかったよ。」

仕事の絵コンテは出せないからと、今回の対談のためにオリジナル作品、AKOの絵コンテを描いてきてくれた武藤さん。主人公の変身シーケンス。

武藤「そこで一緒にカメラパンして、入ったら先端、で敵が飛びかかってフレームアウトして、ぐわぁ~んってなって」絵コンテの用語解説までしてくれました。

可能性をどう”良く潰していく”か。

渡邉さんのお仕事の仕方をお聞かせください。

渡邉
「デザイン事務所は基本的にはクライアントがいて、依頼・要望があって仕事が発生します。会社から発進した仕事って結構少ないんです。」
武藤
「やっぱり、依頼を受ける側はシビアだよね。」
渡邉
「そうだね。依頼は”ソフトは作ったけどそれを売り出すためのガワ(外装)がない”とか、“来週プレゼンをするので、それまでにCGが欲しいのですが、形がわからないんですよね”という曖昧なものまで。1週間では、”ここはこんな感じですか?”って依頼人に確かめている時間もないから、こっちで形を決めちゃうこともある。 僕の勤めている会社の社長も言ってるけどモノのカタチを決めるっていうのは可能性を潰すって事らしい。」
武藤
「へぇ~!」
渡邉
「依頼人は可能性をたくさん持って依頼してくる。モノにする以上、物質だからその可能性のいくつかを潰して形にしていく作業になる。クリエイティブと逆の事をしているイメージがあるよ。プロダクトには、そういう作業があるんだよね。可能性をどう”良く潰していく”か。モノにしなきゃいけないから、可能性を潰す。そこがアーティストとデザイナーの違いなのかな。」 

渡邉さんの勤める株式会社N and R Foldings Japanで制作された 立体物から平面になるというコンセプトのクラッチバッグ「ORISHIKI」

 

渡邉さんは中のフレーム制作に携わった。なんと、これは世界に1つしかないのだとか。